産業用ロボットとは?定義や種類、特別教育の必要性など徹底解説

現代の製造業において産業用ロボットは、生産性の向上や人手不足の解消などにおける重要な鍵を握ります。本記事では、産業用ロボットとは何か、基本的な定義や用途、種類、導入のメリットなどについて分かりやすく解説します。本記事を読むことで、産業用ロボットに関する基本知識を身につけることが可能です。

産業用ロボットとは?定義や種類、特別教育の必要性など徹底解説
産業用ロボットとは?定義や種類、特別教育の必要性など徹底解説

現代の製造業において産業用ロボットは、生産性の向上や人手不足の解消などにおける重要な鍵を握ります。本記事では、産業用ロボットとは何か、基本的な定義や用途、種類、導入のメリットなどについて分かりやすく解説します。本記事を読むことで、産業用ロボットに関する基本知識を身につけることが可能です。

産業用ロボットとは?

産業用ロボットとは、工場などの生産現場で活躍する機械装置の一種です。産業用ロボットは、工場の自動化(Factory Automation:FA)を実現する上で重要な役割を担っており、人の代わりにさまざまな作業を自動で行います。以下では、産業用ロボットの具体的な定義やその他のロボットとの違いを解説します。

産業用ロボットの定義

産業用ロボットは、日本工業規格(JIS)および国際標準化機構(ISO)の規格に基づいて定義されています。具体的には以下の特性を持つ機械装置とされています。

  • 自動制御および再プログラムができる多目的なマニピュレータ:これにより、ロボットはさまざまな作業に柔軟に対応できます。
  • 3軸以上でプログラム可能:複数の動作軸を有し、複雑な動きが可能です。
  • 一か所に固定して使用する、または移動機能を有する:使用する環境や目的に応じて固定され、もしくは移動できます。
  • 産業自動化のために活用される:主に製造業の生産ラインで使用されることを目的としています。

マニピュレータとは、主に産業用ロボットのアーム部分を指し、人間の腕のように物を掴んだり操作したりする部分です。産業用ロボットは、安全かつ効率的に作業を行うため、ISOの安全規格に基づいた運用が求められます。

参照元:JIS B 0134(「2 一般」内の2.9が該当)
URL:https://kikakurui.com/b0/B0134-2015-01.html

参照元:JIS B 8433-1(「3 用語及び定義」内の3.10 が該当)
URL:https://kikakurui.com/b8/B8433-1-2015-01.html

産業用ロボットと協働ロボットの違い

昨今、注目を集めているロボットとして、「協働ロボット」が挙げられます。協働ロボットとは簡単に言うと、「安全柵などの設置が不要で、人間と同じ空間で共同作業できる産業用ロボット」です。

一般に産業用ロボットは、労働安全衛生法および同規則に基づき、安全柵などによって人間と物理的に隔離されて設置されなければなりません。これは作業者の安全を期すための措置です。

しかし、労働安全衛生法および同規則では、異常動作の自動検知・自動停止機能など、規定の安全措置が講じられたロボットに関しては、安全柵なしの運用を認めています。この特殊なロボットが協働ロボットです。人間と同じ空間で共同作業できる協働ロボットは、従来の産業用ロボットでは対応が難しい現場でも運用できるので、今後さらに産業自動化を進めるための鍵になると期待されています。

協働ロボットについての詳細は、以下の記事をご参考にしてください。

https://www.universal-robots.com/ja/products/collaborative-robots-cobots-benefits/

産業用ロボットとサービスロボットの違い

今日では、社会のさまざまな場面で「サービスロボット」を目にする機会が増えています。明確な定義はありませんが、サービスロボットは主に以下のような用途で人間の作業を代行するロボットを指します。

  • レストランでの配膳
  • 施設の清掃
  • 接客や施設の案内
  • 医療・介護現場での補助
  • 災害現場の対応

先述の通り、産業用ロボットは工場など生産現場での作業を自動化するロボットです。これに対してサービスロボットは、工場以外も含めた広い範囲で使用されており、より日常生活に近い場面で人をサポートするロボットを主に指します。少子高齢化に伴い、社会全体での人手不足の深刻化が予想されるので、こうしたサービスロボットの需要はさらに増していくものと考えられます。

産業用ロボットの主な用途

産業用ロボットは主に、工場のラインなどで使用され、以下のような用途で活用されます。

樹脂成型:樹脂やプラスチックの成型工程では、高温の材料を精密に成形する必要があります。ロボットはこのプロセスを自動化し、一貫した品質と高い再現性で製品を製造します。

溶接:自動車製造などの分野で必要とされる溶接作業は、高熱と強い光が伴う危険性の高い作業です。ロボットを使用することで、作業の精度を高めると同時に、作業者の安全を確保できます。

塗装:塗装作業は有害な化学物質を扱うことが多く、健康リスクが伴います。ロボットを活用することで、安全かつ効率的な塗装が可能になります。

機械加工:切削やドリリングなどの機械加工は高い精度が求められる作業です。ロボットはプログラムされた通りに精密な加工を行い、製品の品質を向上させます。

電子部品実装:電子部品の実装は微細な精度を要する作業です。ロボットはこの高精度な作業を迅速に実行し、生産効率の向上に貢献します。

組立:ロボットは複数の部品を正確に組み立てることも可能です。これにより製造プロセスの速度と正確性が向上します。

入出荷:物流センターなどでの入出荷作業は、ロボットによって自動化されているケースが多くあります。重い物品の持ち運びをロボットが行うことで、作業者の負担が軽減されます。

マテハン(マテリアルハンドリング): 材料の搬送、移動を含むマテハン作業も、ロボットにより自動化できます。これにより、効率的な物流が実現し、作業の速度と安全性が向上します。

産業用ロボットはこれらの用途において、人間の作業者に代わって精密かつ効率的に作業を行うことで、生産性の向上やコスト削減、品質向上などに大きく貢献しています。また、重労働や危険を伴う作業をロボットに代行させることは、作業者の健康や安全を確保し、職場満足度を向上させるためにも有効です。

参照元:一般社団法人日本ロボット工業会|2022(令和4)年ロボット産業需給動向調査
URL:https://www.jara.jp/data/dl/year/IR2022_S.pdf

産業用ロボットの導入で得られる4つのメリット

産業用ロボットの導入は、現代の製造業が抱える重大な問題を解消し、以下のようなメリットを企業にもたらします。

1. 人材不足の解消

日本をはじめ多くの先進国では少子高齢化が進み、労働力不足が社会的な問題となっています。産業用ロボットの導入は、この人手不足をテクノロジーの力によって補う解決策です。ロボットを活用することで、危険な作業や重労働も含めたさまざまな業務を自動化・省人化し、多くの人手を要さない生産体制を構築できます。これにより、人手不足の解消、人件費の削減、作業員の負担軽減といった効果が期待されます。

2. 生産性の向上

人間と違って産業用ロボットは疲れ知らずなため、一貫した性能を保ちつつ24時間稼働し続けることが可能です。加えて、作業内容によっては、人間よりも遥かに速く作業を処理できます。これらの効果により、工場の生産ラインは昼夜問わず効率的に稼働できるようになるため、生産能力の大幅な向上が図れます。生産性の向上は生産コストの節減にもつながるメリットです。

3. 生産品の均一化・品質の向上

プログラムによって自動制御された産業用ロボットは、複雑な作業も正確かつ一定の品質で遂行できます。これにより製造品質の均一化や向上が期待可能です。また、産業用ロボットを使えば、人の手が触れることなく製造過程を進められるので、衛生面でのリスクも軽減されます。これは特に食品や医薬品などの製造においては大きなメリットです。もちろん、検品作業などにロボットを導入し、直接的に品質のチェック・向上に役立てることもできます。

4. 熟練技術の継承

製造現場では、業務が熟練工の技術に属人化していることが少なくありません。しかし、少子高齢化が進む中、後継者がいないまま熟練工が退職してしまい、貴重な技術が断絶することが現在懸念されています。このような中で注目されているのが、産業用ロボットに熟練工の技術を再現させる試みです。熟練工の技術を産業用ロボットに落とし込むことで、「人からロボットへの技術継承」を実現し、属人化することなく事業を続けられます。

【注意】運用には労働安全衛生法に基づいた特別教育が必要

産業用ロボットは、人間より遥かに強靭な力やスピードで生産作業を自動化します。しかし、それだけに運用方法を間違えば、重大な事故などにつながる恐れがあります。そこで、産業用ロボットの安全な運用を期すために、労働安全衛生法第59条第3項では、事業者は特定の役割を担う作業者に教育プログラムを通じた特別教育を行うことが義務付けられています。

  • 産業用ロボットの教示(動作設定など)を行う作業者
  • 産業用ロボットの検査・保守・メンテナンスなどを行う作業者

特別教育の具体的な内容については、労働安全衛生規則第36条各号に規定されています。ここでは、産業用ロボットの安全な操作方法、教示の技術、機械のメンテナンス方法などを習得するために、学科と実技両方の教育が一定時間必要とされています。そのため、産業用ロボットを運用するには、この「産業用ロボット特別教育」を修了した技術者の配置が必須です。なお、出力が80W未満の協働ロボットに関しては、この特別教育は必要ありません。

参照元:e-GOV|労働安全衛生法 第五十九条(安全衛生教育)
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

参照元:e-GOV|労働安全衛生規則 第三十六条(特別教育を必要とする業務)
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032_20240401_505M60000100022

参照:安全衛生情報センター|安全衛生特別教育規程 第十八条・第十九条(産業用ロボツトの教示等の業務に係る特別教育)
URL:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-16/hor1-16-1-1-0.htm

産業用ロボットの種類

産業用ロボットはその機構や形態に応じて主に6つの種類に分けられます。それぞれの概要は以下の通りです。

垂直多関節型ロボット

TBD

垂直多関節型ロボットは、産業用ロボットの中で最も一般的な種類です。このロボットは複数の関節があり、それぞれが独立して動くので、人間の腕のように非常に柔軟な動作ができます。想定される用途は、溶接・塗装・組立などの複雑な作業です。垂直多関節型ロボットは複雑な制御を要する分、動きの自由度が高く、効率良く作業を行えます。自動車産業などで特に活用されているロボットです。

パラレルリンク型ロボット

TBD

パラレルリンク型ロボット(別名:デルタロボット)は、高速かつ精密な動作が要求される作業に最適なロボットです。この名称は関節が並列型(パラレル)な構造をしていることに由来しています。パラレルリンク型ロボットは複数のアームが一点に集まる構造をしており、その先端部を制御して製品を持ち上げ、運搬などを行います。このロボットの主な用途は、ピッキング作業です。ベルトコンベア上の製品の選定や異物の除去などに適しています。

水平多関節型ロボット(スカラロボット)

TBD

水平多関節型ロボットは、水平方向の作業を得意とするロボットです。スカラロボットとも呼ばれます。このロボットのアームは水平方向にのみ動き、高速で正確な位置決めをしてから先端部を上下に稼働します。水平多関節型ロボットは、主に真上からアームを伸ばして使用される形です。動きや構造が比較的シンプルな分、低コストでの運用が可能で、設置に場所をあまり取らないのが特長です。電子部品の基盤組立や半導体のウエハ搬送などに利用されています。

直角座標型ロボット(単軸・直交ロボット)

TBD

直角座標型ロボットは、その名の通りアームを上下左右へ直角にスライドさせて動作するロボットです。ガントリーロボットとも呼ばれます。直線的な動きが主であるため、複雑な動きはできませんが、その代わり制御が簡単で精度の高い動きができ、低コストというメリットがあります。ただし、水平多関節型ロボットなどと比べると、設置には相応の面積を要します。主な用途は物品の検査や重量物の搬送です。

極座標型ロボット

TBD

極座標型ロボットは、中心に旋回軸を持ち、上下への回転や伸縮が可能なアームを持つロボットです。このロボットはアームの先端が広範囲をカバーできるように設計されています。極座標型ロボットは、産業用ロボットの元祖とも言える存在です。しかし、作業可能範囲の狭さもあって、現在ではすでにあまり使用されていません。主な用途は運搬などの比較的単純な反復作業です。

円筒座標型ロボット

TBD

円筒座標型ロボットは極座標型と似ていますが、このタイプはアームが上下回転ではなく、上下に移動する点で異なります。主に円筒形の作業範囲内で活動し、上下および前後の動作を直線軸で実現します。直角座標型ロボットに比べると、接地面に対する作業領域は広めです。円筒座標型ロボットも歴史の古いロボットですが、今でも一部では利用されています。主な用途は液晶パネルの搬送などです。

まとめ

産業用ロボットとは、主に工場の製造ラインで使用され、作業を自動化する機械です。工場の自動化に不可欠な要素であり、樹脂成型、溶接、塗装、機械加工等々、多岐にわたる用途で効率的かつ安全に作業を行えます。産業用ロボットの活用によって、工場の生産性や安全性の向上、人手不足の解消、熟練技術の継承などのメリットを得ることが可能です。

昨今では、人間と同じ空間で作業することを前提とした「協働ロボット」も登場しており、産業の自動化に新たな可能性をもたらしています。安全柵などが不要で人間と共同作業できる協働ロボットは、比較的小型に作られているのでスペースを取らず、小規模な製造ラインでも導入しやすいという利点があります。

いずれにしても、人手不足の解消や生産性の向上といった製造業の課題を克服するには、産業用ロボットないしは協働ロボットの積極的な活用を図ることが重要です。

Universal Robots

We believe that collaborative robotic technology can be used to benefit all aspects of task-based businesses – no matter what their size.

We believe that the latest collaborative robot technology should be available to all businesses. The nominal investment cost is quickly recovered as our robotic arms have an average payback period of just six months.

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