精密さを量産へ――ユニバーサルロボットが切り拓く細胞治療の新しい常識

Multiply Labs

Multiply Labsのロボットクラスターが生み出す、命を救う細胞・遺伝子治療へのインパクトをご覧ください。

概要

Multiply LabsはURの協働ロボットを活用し、細胞・遺伝子治療の製造プロセスを根本から変革する画期的なロボットクラスターを開発しました。 このソリューションにより、製造コストを74%削減し、クリーンルーム1平方フィートあたりの投与量を最大100倍に拡大することを実現。 しかも従来の手作業と比べて、品質、再現性、無菌性を大幅に向上させています。

Multiply LabsがURを採用した理由は、人の手に近い精密な動作性能、6軸構造による柔軟な操作性、繊細な処理を可能にする力制御(Force Mode)、ソフトウェアとの高い親和性、強固なユーザーコミュニティ、そしてクリーンルーム対応設計にあります。

手作業という「ボトルネック」――命を救う治療の量産を阻む壁

Multiply Labsの共同創業者兼CEOであるフレッド・パリエッティ氏は、 「細胞・遺伝子治療の製造は、これまで驚くほど手作業に頼った“職人技”のような工程でした」と語ります。

血液がん(リンパ腫や白血病など)に代表される疾患に対し、患者自身の細胞を利用して治療するこれらのパーソナライズド治療では、科学者がピペッティングや細胞の攪拌など、数百もの工程を手で行う必要があります。

この治療は大量生産できず、患者ごとにカスタマイズされるため、1回あたり30万〜200万ドルと高額です。 さらに、製造途中で微生物汚染が発生すると製品全体が使用不能になり、滅菌もできません。治療用の細胞そのものが死滅してしまうからです。

「こうした工程では、必要とする患者数に見合ったスケール化は到底できません。ロボットがこの課題を解決できるとすぐに確信しました」とパリエッティ氏は語っています。

Multiply Labs

業界 医療・化粧品
アメリカ
従業員数 40
使用したURロボット UR12e
ソリューション Multiply Labs robotic cluster

主な価値ポイント

  • 製造コストを最大 74%削減
  • クリーンルーム1平方フィートあたりの投与量を 最大100倍 に拡大
  • 人手作業よりもばらつきが少なく、誤差範囲を大幅に縮小(サブミリ精度での動作)
  • 人為的な汚染リスクを排除
  • 既存の承認済み手作業プロセスをそのまま再現可能で、再承認にかかるコストを削減

URロボットで自動化した作業

  • ピペッティングや細胞の攪拌作業
  • ヒトT細胞の培養および培地供給
  • 各種機器、消耗品、カセットのハンドリング
  • 細胞治療プロセスに求められる精密な操作の実行

解決した課題

  • 非効率で手作業に依存した「職人的」な製薬プロセス
  • パーソナライズド医薬品におけるスケール化の難しさ
  • 人為的ミスによる汚染や製品廃棄のリスク
  • 高額なクリーンルーム設備と、手作業による低い作業密度
  • 承認済み製造プロセスの大幅な変更に伴う規制上のハードル

ソリューション

Multiply LabsがURを選んだ理由とは?
Multiply Labsのシステムは、複数のURロボットアームを並列に配置したモジュール構成のロボットクラスターで、柔軟な拡張と高い生産効率を両立しています。

製造コストを74%削減、投与量を最大100倍に拡大

Multiply Labsのソリューションは、複数のURロボットアームが並列動作するモジュール型ロボットクラスターです。
床から天井まで積層配置でき、衝突回避機能を備えつつ、既存の手作業プロセスを忠実に再現する設計となっています。

このロボットアプローチの有効性は、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)やスタンフォード大学などの一流研究機関による査読付き論文で検証されています(詳細はページ下部のリンク参照)。

ShebaメディカルセンターのAdvanced Biotherapy Centerディレクターであり、UCSFで医師科学者としても活動していたジョナサン・エセンステン博士(M.D., Ph.D.)は次のように述べています。

「従来の手作業による細胞治療の製造プロセスと、同一工程をロボットで実施した場合を比較したところ、コストをおよそ74%削減できました。これは、より低コストかつ限られた空間で医薬品を製造できるという意味で、まさに“量子的飛躍(quantum leap)”と呼べる成果です。」

人の手を介さず、装置を縦方向に積層できる構成としたことで、従来の手作業が抱えていたスペース制約も解消。
Multiply Labsの共同創業者兼CEO フレッド・パリエッティ氏はこう述べています。

「私たちの試算では、クリーンルーム1平方フィートあたりの患者投与量を最大100倍にまで増やすことができました。」

ロボットシステムは主要プロセスパラメータのばらつきを大幅に低減し、無菌性も飛躍的に向上させます。

汚染リスクの排除

コスト削減や省スペース化に加え、このロボットシステムは主要プロセスパラメータのばらつきを大幅に低減し、人手による作業を大きく上回る**高い精度(誤差0.1mm以内)**を実現しています。
さらに、無菌性も飛躍的に向上しました。

Multiply Labsのパリエッティ氏はこう語ります。

「ロボットは呼吸しませんし、触れてはいけないものに触れることもありません。」

UCSFなどの研究でもこの結果が裏付けられており、
エセンステン博士は次のように述べています。

「手作業のプロセスでは汚染が確認されましたが、ロボットによるプロセスでは一切汚染が発生しませんでした。」

Multiply Labsのソリューションは、複数のURロボットアームが並列で動作するモジュール型ロボットクラスターです。

模倣学習 ― スケーラブルな自動化の未来へ

Multiply Labsの革新を支える中核技術のひとつが、**「模倣学習(Imitation Learning)」**です。
このアプローチでは、ロボットが新しい手法を強制的に導入するのではなく、熟練した人の動きを学習し再現します。

Multiply Labsは製薬企業と連携し、科学者が実際に作業している様子を映像で記録。
そのデータを協働ロボットに学習させることで、科学者の動作を効率的かつ正確に再現できるようにします。

パリエッティ氏はこう語ります。

「ロボットは人と同じ作業を、より効率的に、より安定して、24時間365日、しかも複数台で並行して行うことができます。」

この手法により、協働ロボットは最大100種類の新しいタスクを自律的に習得できるようになりました。
それこそが、細胞治療製造をスケール化する鍵なのです。

「これらの細胞治療の製造において、従来の手作業プロセスと、同じ工程をロボットで実施した場合を比較したところ、約74%のコスト削減が確認されました。これは、より低コストかつ限られたスペースで医薬品を製造できるという点で、まさに**量子的飛躍(quantum leap)**と呼べる成果です。」

Shebaメディカルセンター 高度バイオセラピーセンター長 ジョナサン・エセンステン氏
ロボットシステムは、主要なプロセスパラメータの変動を大幅に低減します。無菌性も大幅に向上します。

規制対応を効率化――数十年と数十億ドルを節約

ロボットシステムが既存の手作業プロセスを高精度に再現できることは、医薬品製造における規制適合性の面で大きな強みとなります。

Shebaメディカルセンターのジョナサン・エセンステン博士はこう説明します。

「製薬企業は、すでに承認を受けた製品については、製造プロセスを大きく変更することができません。
しかし、承認済みの手順をロボットで忠実に再現すれば、新たなプロセスを再承認する必要がなくなり、数十年、そして数十億ドル規模の時間とコストを節約できる可能性があります。」

Multiply Labsのソリューションは、複数のユニバーサルロボットアームが並行して動作するモジュラーロボットクラスターです

URが選ばれた理由 ― 人に近い動きと充実したエコシステム

Multiply Labsは、人の手に近い動作性能を持つ協働ロボットを求めていました。
複数の選択肢を比較検討した結果、ユニバーサルロボットが「明らかなベストチョイス」だったと、Multiply Labsのロボティクスソフトウェア責任者 ナディア・クレシグロワ氏は語ります。

細胞治療に求められる複雑で繊細な操作は、単純な3軸のスカラロボットでは対応できません。
そのためチームは、完全6軸構造のURロボットアームを採用。
さらに、レールシステムを組み合わせて8軸自由度の拡張構成とすることで、より広範な動作範囲を実現しました。

ロボットシステムは、主要なプロセスパラメータの変動を大幅に低減します。無菌性も大幅に向上します。

力覚センシングとソフトウェア連携が開発を加速

Multiply LabsがURを選んだ決め手のひとつは、UR独自の統合型力覚センシング機能でした。
人の指先のような触覚フィードバックを再現できるこの機能は、繊細で高価な部品を破損させずに扱ううえで不可欠だったといいます。

ロボティクスソフトウェア責任者のナディア・クレシグロワ氏はこう振り返ります。

「この機能のおかげで、開発期間を数か月単位で短縮できました。」

さらにURは、Pythonインターフェースを含む多様な制御オプションを備え、ソフトウェア連携もスムーズ。
当初、クレシグロワ氏はティーチペンダントのシンプルなUIに制約を感じていたものの、

「実際には堅牢な制御が可能で、ドキュメントやオンラインチュートリアルも非常に充実していることが分かりました。」
と語ります。

また、URの広範なユーザーコミュニティとエコシステムも大きな支えとなりました。
Multiply Labsのパリエッティ氏は次のように述べています。

「URはRoboDKやNVIDIA Isaacなどの外部ツール、AIモデルとも高い互換性を持ち、
エンドエフェクタやカメラセンサーなどのカスタム構成も容易に統合できます。これが私たちにとって大きなアドバンテージでした。」

Multiply Labsのソリューションは、複数のユニバーサルロボットアームが並行して動作するモジュラーロボットクラスターです

世界中の患者へのアクセスを拡大

Multiply Labsのロボットクラスターは、すでに複数の商業パートナー施設で稼働を開始しています。
パリエッティ氏は次のように述べています。

「このクラスターは驚異的な効率、スループット、再現性を実現しています。まさに“人を超えたパフォーマンス(superhuman performance)”です。」

エセンステン博士もこう続けます。

「Multiply Labsのロボットクラスターは、患者ごとにカスタマイズされる細胞・遺伝子治療の製造方法を根本から変えるでしょう。
そして最終的には、世界中の患者がこれらの治療にアクセスできる機会を大きく広げることにつながります。」

研究

このロボットアプローチの有効性は、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)やスタンフォード大学といった世界有数の研究機関による研究で厳密に検証されています。

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